心が触れ合うとき

今朝突然降りてきたアル桜妄想。
文章力皆無。文字の羅列のみ。

元ネタ
若き数学者のアメリカ (新潮文庫) 藤原 正彦(著)


一般人設定
桜…アメリカの大学に留学しにきた大学生。留学期間を終え帰国の日が迫っている
アル…大学の同期生。桜とは同期生として大学内で同じ講義を受けている程度の友人関係。


寒い冬の夕暮れ、桜はルームシェア先に帰宅する途中、大学の前で偶然アルフレッドに会った。
彼は同じゼミのメンバーで、いつもリーダーシップをとっている頼りになる存在だった。留学生にも分け隔てなく接することを心がけているようで、桜にとっては信頼できる友人だったが特に親しい間柄というわけではなかった。

「やぁ桜、そろそろ帰国するって聞いたけどいつ帰るんだい?」
「こんにちは、アルフレッドさん。明後日の飛行機で帰ることになりました。」
「明後日だって!?そんなに急だったなんて全然知らなかったよ。誰か空港まで送っていけるやつはいるのかい?」
「エミリーとジェシーが送ってくれるそうです。」
「そうか、それなら良かった。」
桜はうつ向いたまま次の言葉を探していた。

アルフレッドはいつもの調子で明るくたずねた。
「アメリカはどうだった?楽しめたかい?」
「ええ…」
アルフレッドは複雑な表情で微笑む桜を不思議に思ったが、彼女が何か言いたげなのを見てとって助け舟を出すつもりでさらに明るく話続けた。
「もしかして、楽しくなかった?」
「いえ…そうじゃなくて。楽しいことはたくさんありました。友達にも恵まれたしルームメイトともうまくやれてたし…」
「良かったじゃないか。」
「ええ…」

少しの沈黙の後、意を決した様子で桜は話し始めた。
「でも貴方には本当の事を言います。本当は辛いことの方が多かった。やっぱり私にはまだ英語での授業は難しかったし、ご存じの通りディスカッションは大の苦手でした。それに街を歩いているとすれ違いざまにパールハーバーの事を攻められたりして、まだ戦争は終わってないんだなって思いました。」

自分が想像していなかった桜の体験に驚いたアルフレッドは、申し訳なさそうに頭をかいた。
「そんなことがあったのかい?心ない人がいるんだな。君が悪いわけじゃないのにな。」

慌てて顔を上げて桜は笑顔を作った。
「あ、でも親切な方にもたくさん出会えましたから、もういいんです。ごめんなさい。変なこと言って。」

「いや、もっと君の話、聞きたかったよ。」
嬉しそうに桜は微笑んだ。つられてアルフレッドも笑う。

「あの…短い間でしたけどありがとうございました。貴方が私と話すときだけゆっくり話してくださるのが、私、とても嬉しかった。親切にしてくださって本当にありがとうございました。」
桜は改まったように頭を下げてお礼を言った。

急に頭を下げられて照れるアルフレッド
「お…俺も君と会えて日本が好きになったよ。今まで日本と言えばニンジャとニンテンドーとトトロしか知らなかったからね!」
「ふふふ」
「はははは」
二人は笑いあう。
お互いいつも通りの同期生の反応に、すでに別れが迫っていることをつい忘れていた。

雪が降ってきた。

「雪が…」
桜の黒い髪に積もった白い雪を見て、その雪とうつ向く桜の赤い頬が綺麗だなぁと思ったアルフレッドは、無意識に桜の髪に付いた雪を右手でそっと払った。

友人の優しい仕草に桜の胸が熱く締め付けられた。
急に触れられた驚きと別れの寂しさや留学中のたくさんの思いが混じりあい、たまらなくなり、鼻の奥がつんとし、涙で視界が滲んだ。そして桜はそっとアルフレッドに近寄った。
どうして欲しかったわけではないけれど、まるで体を寄せ合って雪の寒さを和らげようとする人の本能のような不思議な気持ちで静かにアルフレッドの胸に顔をうずめた。

自分の胸に身体を寄せた桜にアルフレッドは驚いた。しかし彼女の髪に積もる雪と小さく震えるその体を自分の腕の中に包み込みたいという衝動に駆られ、友人同士のハグだとは言い訳できないほどの力で強く彼女を抱きしめた。

長い時間二人とも言葉なく、ただ静かに抱き合っていた。

「…降りだしたね。寒いかい?」
「ええ、少し」

桜もアルフレッドも、なぜ急にこんなに切ない気持ちになったのか自分でもわからなかった。
その切なさは友人との別れの悲しみのせいだけではなかった。
抱きしめ合っている間、桜もアルフレッドも別れが迫っていることを忘れていたのだった。

ただお互いの心臓の音を聞き、お互いを静かに温めあうような、そんな気持ちだった。

しばらく抱きしめあった後、我にかえったように桜がアルフレッドの胸に埋めた顔をあげた。
「…そろそろ帰りますね。」
アルフレッドはハッとして、それからゆっくりと彼女の体を解放した。
「送って行こうか?」
「いえ、まだ明るいし大丈夫です。」
アルフレッドは彼女に何か言うべき事がある気がしたが、うまく言葉が出てこなかった。
いつもあけすけにものを言い、討論することが大好きな自分がこんなふうに言葉に詰まることがあるなとどは思ってもみなかった。

少しの間のあと、そんな自分を振り切りように明るく言った。
「また会おう。もしまたアメリカに来たら大学に顔だしてくれよ。俺きっとまだいるからさ。」

「はい、そうしますね。」
いつも通り静かな微笑みで彼女は言ったが、アルフレッドはもう二度と彼女には会えないような気がした。

最後に何か言葉を送りたかった。
もっと話を続けて桜を引き留めたい、せめて今日の別れの時間を少しでも遅らせたい。
何でもいいから話し続けなければ、彼女は日本に帰ってしまう。
焦れば焦るほど喉がつかえて言葉が出なかった。

先に口を開いたのは桜だった。
「…じゃあ、お元気で。」
「あ、ああ。」

桜はマフラーに顔を埋め、逃げるように小走りで去っていった。
アルフレッドも歩きだしたが、すぐに振り返り走って行く桜の小さな背中を見送った。
そして彼女が曲がり角を曲がり見えなくなってしまうまで見つめていた。












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by ookuma-koguma | 2015-01-29 14:18 | ヘタリア | Comments(0)

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